ロボット支援手術。 新たな時代の幕開けか?
こんにちは。 なすB-のガンバル日記にお越しいただきありがとうございます。
前立腺がんの外科治療で全摘出手術をする際の現在主流の手術法は、ロボット支援下手術であることは以前に投稿しました。
そこでロボット手術について調べていましたら、現在の手術支援ロボットの主流「Da Vinci:ダヴィンチ」に関する特許が2019年7月に満了したそうです。
これからの手術ロボット業界にどのような影響が出てくるのか見てみました。
この記事でお伝えすること
手術支援ロボットの歴史
開発経緯
手術のロボットの歴史を遡ると、1990年代に勃発した湾岸戦争に備えアメリカ陸軍が遠隔操作で戦場の負傷者の治療や手術を行えるように開発依頼が発せられたことが発端となっています。
湾岸戦争は予測した時期より早く終結したため、アメリカ軍の手を離れ民間での開発が継続し、1999年に Da Vinci(ダヴィンチ サージカルシステム)が完成し、2000年からインテュイティヴ・サージカル社を含む複数の企業で開発・製造されました。
その代表的な機種であるダヴィンチは2014年までに全世界で3,100台が導入され、日本では2015年末時点で211台導入されています。
出展:wikipedia ロボット支援手術
手術支援ロボットの最新の導入実績
2019年9月末時点でのインテュイティヴ・サージカル社製ダヴィンチの導入台数は世界で約5,400台にのぼり、導入実績を大きく伸ばしています。
内訳は、アメリカ:3,459台、 ヨーロッパ:936台、 アジア:718台で日本での導入台数はアジアの約半数超のようです。
ロボット手術って・・
ロボットとは言ってもSF映画のようなロボットが勝手に手術をする訳ではありません。
- 前立腺がんにおけるロボット手術は、腹腔内視鏡手術の延長線上にあります。
- 顕微鏡の様な接眼鏡を通してロボットアームの先端に取り付けられたカメラ(目)が
とらえた鮮明な画像をもとに、360°自由自在に動かせる鉗子(手)と手術機材を操作して- より深部に入り込み
- より明瞭な視界の中で
- 手ブレを抑制した精緻な手術を行います。
遠くない将来には映画STAR WARSに登場する「C-3P0」の様なロボットに手術される時代が到来するかもしれません。(笑)
ロボット支援下前立腺全摘除術を開腹手術と比較した場合
- 開口部(傷口)が小さくて済む
- 開口部(傷口)が小さい= 回復が早い
- 出血が少なく抑えられる = 輸血量を低減
- 輸血が少ない = 輸血による合併症のリスク低減
- 術後の痛みが軽い = 患者の身体的負担が軽減される
- 入院期間を短縮できる = 医療費が低減できる(特に外国の国々)
などのメリットがあります。
日本では2012年から前立腺がんでのロボット手術が保険適用になりました。
ロボット支援手術の保険適用範囲が順次拡大されるに伴い、手術支援ロボットの普及が加速しました。
一方、課題も少なからずありました。
手術支援ロボット導入の課題
何といっても手術支援ロボットの最大の課題はその価格です。
- 1台の機器の価格が1億6000万円~3憶7000万円と巨額
- 研修料金、使用料金等、導入後に継続的に発生する年間数千万円規模の維持費
その費用の一部を構成するであろう特許が20年間の歳月を経て2019年に期限満了を迎えました。
特許出願の状況
膨大な件数の特許・登録商標(2020年5月5日現在)
- 「手術 ロボット」をキーワードに出願特許を調べると、835件の特許と14件の意匠が登録されています。
また「手術 ロボット インテュイティブ」で検索すると、202件の特許(全体の25%位)が登録されています。
- インテュイティブ サージカル オペレーションズ社(ダヴィンチの製造・販売元)が権利者としての登録済み特許、商標数
- 特許数:606件
- 商標数:43件
- 出典:J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)にて検索
インテュイティブ サージカル オペレーションズ社は、幅広く特許・意匠・商標の権利を有しています
2019年7月での特許期間が満了した件数は確認できませんが、相当な件数だったのではないかと推察します。
ロボット利用の市場規模
株式会社日本能率協会総合研究所(略称:JMAR 本社:東京都港区、代表取締役:譲原正昭)提供のMDB Digital Searchでは2024年での手術支援ロボットの市場調査を行い、その市場規模は約270億円(2019年は約200億円)と予測されています。
出典:株式会社 PR TIMES
2019年7月末の特許期間満了が市場に及ぼす影響は?
- 特許満了による参入障壁の低下 ⇒ 参入企業の増加 ⇒ 市場競争の活性化(激化?)
- 特許から解放されて廉価な手術ロボットの出現 ⇒ ジェネリック手術ロボット(ジェネリック薬剤からの造語です)
- 未来を見据えた新規の発想での手術ロボットの台頭
- 導入、維持・運用にかかる費用の低減 ⇒ 手術システム普及の加速化
医療・介護業界でのロボット利用技術の拡大
- 新たな分野への展開
- 医療
- 処理の自動化:注射ロボット(採血など)、血圧測定、処方箋の自動調合
- 看護師の補佐:患者データの収集と集計、業務日誌の自動作成
- 遠隔医療支援:へき地、遠隔地での医療施設が脆弱な地域の人的、技術的補完
- 介護
- 処理の自動化:お給仕ロボット、歩行支援、おトイレ支援
- 介護士の補佐:介護者のお話相手
- 医療
人工知能(AI)との組み合わせで、労力の補完と業務内容の自動化・簡素化が推進され、人でなければ提供できない業務に人的リソースが集中され、医療品質の向上と効率化が図れる期待があります。
おわりに
手術支援ロボットの業界が新たな時代に突入したように感じます。
これまでロボット支援手術といえばインテュイティヴ・サージカル社製ダヴィンチが第一に思い浮かびますが、これから新たな参入企業を交えての良い意味での競争が始まる・・・、いや既に始まっているように感じます。
今回はなすB-自身の前立腺がんの外科治療にヒントを得て、少し話題がズレているかもしれませんが、将来に向けてのロボット支援手術システムについて勝手に思いを馳せさせていただきました。
長文になりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません